作品の選定を外していないためか、クレームはほとんどありません。
10月以降は配信回数を週2回、3回と増やしたり、動画アーカイブ機能を追加したりと、内容を強化していく予定です」(事業本部、事業開発本部、O氏)動画の選定やメールマガジンの文言には、専任のスタッフを置いて、常に全力投球で臨んでいる。
事実、送られてくるメールマガジンは、(特に男性が)クリックしたくなるようなものばかり。
フォーサイド・ドット・コムなどのDVD素材を中心にセレクトされた動画(一部撮り下ろしも存在する)は、わずかな時間ながら毎週配信が楽しみになる出来だ。
作り手のこだわりは、メールの内容から動画に至るまで、すべてに及んでいる。
「まずメールありきのコンテンツなので、件名や文言は非常に重要です。
それによって、クリック率も変わってきますからね。
『東スポの見出しを超える』という意気込みで頑張ってます(笑)。
動画の内容も、抜き出す部分で、独自性が出せているのではないでしょうか」(長屋氏)メールで配信される気軽さや、グラビア動画という内容が相まって、普段ケータイ・コンテンツではあまり重視されない、男性や年齢層の高いユーザーも多いという。
「そもそも、配信する動画をグラビアにしたのも、『20代以上の男性に受けるコンテンツは何か』ということを考えて出した結論です。
ケータイというと、Fl層(20〜34歳の女性)に注目がいくことが多いのですが、そこに固執していると、コンテンツの幅は広がりません」(長屋氏)では、なぜ大手コンテンツ・プロバイダーであるサイバードが、あえて勝手サイトを展開しているのか。
この疑問に、石川氏はこう答える。
「公式サイトの課金と集客の魅力は捨てがたいのですが、勝手サイトに比べて自由度が制限されるのも事実です。
勝手サイトビジネスには、2004年ぐらいから取り組んでいますが、いろいろなことを試しながら、徐々にステップアップしていくなかで、今の『週刊=‥グラビア動画』も生まれました。
グラビアのような内容は、引きのあるものを作ろうとすると、厳しいレギュレーションのなかでは限界がありますからね」公式サイト以上に自由度が高い勝手サイトは、大手コンテンツ・プロバイダーにとっても、魅力的なようだ。
ユーザーも、同じ動画が見られるのであれば、有料の公式サイトより、無料の勝手サイトを選ぶだろう。
そう考えると、今後、サイバードが動画コンテンツを、質・量ともに拡充していくことは確実だ。
今回取材した4社とも、「動画市場はこれから」という認識を示している。
無論、現在盛り上がりつつあるジャンルであることに、変わりはない。
筆者のRHから見ると、この市場で目立っているのも勝手サイトだ。
ジグムービーのように、キャリアとはまったく関係のないポジションで、高いシェアを占めるプラットフォームを作る会社も、その一例だ。
クリック・TVのように、ユーザーの支持を受け、公式サイトに招かれるサイトも現れている。
ニコニコ動画や、週刊=‥グラビア動画のように、動画にひと工夫加えて、人気を博すところも、すべて勝手サイトだ。
無料のストリーミング配信でユーザーを動画に根付かせ、有料のオンデマンド配信に誘導するという動きも見られる。
確かに公式サイトの課金は、コンテンツ・プロバイダーにとって捨てがたい魅力がある。
だが、立ち上がりつつある市場を支え、それを拡大するのは、やはり無料の勝手サイトなのだ。
「スピード感」や「自由な発想」で公式サイトを凌駕ゴルゴンゾーラやモバゲータウンはもちろん、本書では紹介できなかった「プロフ」と呼ばれるプロフィール公開サイトや、ケータイ小説を展開する「魔法のiランド」など、キャリアの思惑を超えたコンテンツが、ヒットを飛ばすことが多くなっている。
もちろん、単にヒットしているだけでなく、きちんとビジネスに結びついているコンテンツも、以前と比べるとけた違いに増えている。
キャリアも、勝手サイトの動きを無視するわけにはいかなくなっているのは、再三述べてきたとおりだ。
例えば、SNSは勝手サイトから盛り上がったが、それを受けて公式サイトにコミュニティ系のジャンルが新設された。
また、本書で紹介しているクリック・TVのように、勝手サイトでスタートし、動画のジャンルができるのと同時に、公式サイト化するところも現れている。
誤解を恐れずにいうと、以前のケータイ・コンテンツは、あくまでもキャリアが決めた公式サイトのジャンルの枠内で展開されていた。
着信メロディしかり、待受画像しかり、ゲームしかり。
公式サイトにジャンルのないサイトは、ビジネスとして成功するとは思われていなかったのだ。
その意味では「勝手サイトが公式サイトのジャンルを変える」という動きは、この固定観念が変わってきていることを示す、象徴的な事例といえるだろう。
勝手サイトの武器は、スピード感にある。
本書をここまで読んできた読者であれば、それがどのようなものかは、もはや説明の必要もないだろう。
モバゲータウンや顔ちぇき!のように、次々と新機能・サービスをリリースできるのも、勝手サイトならでは。
もし、これが公式サイトだったら、機能を追加するたびに、キャリアの審査を経る必要がある。
また、公式サイトであれば、ジャンルにないコンテンツを始めることは、当然できない。
auオークションやグリーのように、キャリアと提携することで、新たなジャンルを作り出すこともできるが、流行の移り変わりの激しいケータイ・コンテンツの世界では、もたもたしていると、ブーム自体が終わりを迎えてしまう可能性すらある。
もし、モバゲータウンが、公式化を念疎にサービスを始めていたら、まだケータイにSNSは根付いていなかったかもしれない。
同様に、顔ちぇきー・が公式化を狙っていたら、本書執筆時点でリリースされていただろうか。
つまり、既存のサービスにとらわれない、自由な発想で展開できるのも勝手サイトの魅力なのだ。
取材の過程でも、先行して勝手サイトを展開する各社は、公式サイトの課金や集客よりも、スピード感や自由な発想を重視しているように感じた。
ゴルゴンゾーラやニワンゴも、ビジネスモデルが先にあったわけではない。
戦略的にビジネスを展開しているモバゲータウンですら、開始当初は実験的なところがあった。
これらの事実から、ケータイ・コンテンツも、PCの自由な世界に近づいているといえる。
新たにケータイ・コンテンツに参入しょうとした際に、この事実を知らなければ、成功は難しいだろう。
ケータイならではの「空気感」をつかむただし、それは「PCのコンテンツをそのままケータイに持ってくる」ということではない。
モバゲータウンがミクシイを凌駕しているように、ケータイにはケータイの世界がある。
ユーザーも、PCとケータイでは大きく異なる。
今や、ケータイが主役に躍り出ようとしている時代。
最近の中高生が、インターネットに初めて触れる際に利用するのは、PCではなくケータイなのだ。
コンテンツが独特な雰囲気なのは、ケータイを利用するユーザーと、PCを利用するユーザーの年齢層などが異なるため。
これは、どちらが正しいというものではない。
ケータイのコンテンツは、ユーザーの要望に応えていった結果、今のような雰囲気を作り出している。
一朝一夕でできた文化ではないし、コンテンツ・プロバイダーが押し付けているわけでもない。
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